点灯と明滅

交歓日記|Twitter @taka_1_4

New Closeness(こうせき)

 ナイロン製の折り畳み椅子に座って生垣に向かって両脚を伸ばすと、向こう脛がしろく、薄っすら発光して見えた。朝日は重みがなくて漂うように世界を照らすから、早朝はなにもかもが特別な色の見え方をする。一秒ごとに陽が降るように重くなる。光に触られているかんじがする。触れないものに触られているのだと思うとふしぎなきもちがした。

‪ 隣の家で飼われているうさぎが庭先で綿毛になったたんぽぽを食んでいる。種まで食べるのだろうかと思って観察していると、茎だけ食べて満足して、口の真下にぽとりと綿毛を落とした。灰色の毛並みにところどころ土みたいな色の茶色い毛が混じっていてかわいい。尻尾だけ白くて、お尻で白玉を一つ踏みつぶしているみたいに見える。‬
 反対側の家は花をたくさん育てている。パンジーとホワイトレース、あとは名前がわからない。昔から図鑑を読むのがあまり得意じゃなかった。頭からおわりまで全部読むのが読書だと思っていたから、頭もおわりもないものは苦手だった。卒園祝いにとレインボーことわざ辞典をもらったときも、読むものだと思って全部読んだ。

‪ 風に吹かれて綿毛が目の前を通っていくのをぼーっと見る。今までこんなふうに腰を据えて庭を眺めることはなかったから、けっこうたのしい。思えば子どもの頃は、同じ通学路を行き来していても毎日ちがうたのしみがあった。旅先に来ているみたいに、いつもあちこち見回していた。電車に乗るようになって、決まった遠さから外を眺めることに慣れると、日々の景色に目新しさを感じることはなくなった。新しい近さに、わたしはまだ慣れていないのかもしれない。

昨日のリモ飲みの終わりにちょっとだけ話したけど、みんなと交換日記をしたいなと思って、このブログをつくりました。‬
‪いま感じていることや見ている景色を忘れないように書き残し、いま遠くなっている今までの日々のことを思い出せなくならないように書き止める。そのための場になったらいいなと思っています。‬

‪だから、交換日記とはいったけど、順番とか当番はないし、人が書いた日記を読む義務もありません。‬

‪四年前の五月に書いた夢日記http://blog.livedoor.jp/tokyo249/archives/52032070.html)を、‪わたしは今でもときどき読み返しています。自分以外が読んで面白いようなところは一つもないけど、読むたびわたしは、そのとき見た夢の情景を鮮明に思い出すことができます。そういう、ただただ個人的な近景、ぱっと灯ってすぐ消えていく形のないものたちを此処に集めていくことができたら、とてもうれしいです。