点灯と明滅

交歓日記|Twitter @taka_1_4

2020-01-01から1年間の記事一覧

ソムニウム(もっちー)

☆ 毎日通る橋の上から遊園地の乗り物が見える。とても大きくて振子状に揺れる海賊船の遊具。今年の夏に廃園になったその遊園地の一部を毎日見て、まだある、まだあるなと確認していた。一昨日、海賊船の隣に馬鹿でかいクレーンが見えていた。とうとうという…

ランダム(誠)

一時期、息をするのが耐え難かった そんなことを思いだした息をしていたくないというのがどういう状態かというと、死にたいだとかそういう高度な意味ではない。 静かに、本当に静かにしていたい、という思いが強かった。 こんな時他の人はどうするんだろう?…

ささくれ(こうせき)

今でもなぜか覚えているのだけれど、小学生の頃、友達が住むマンションの敷地内にある公園に一人きりで寝そべっていたことがあって、(どうして一人だったんだろう)そのときわたしは死ぬというのはきっと夢のない眠りのようなものなのだろうなと考えていた…

深夜行(もっちー)

夜に拓かれた場所が欲しい。本屋、喫茶店、チェーンのファミレス、花屋。どれも住宅街の最寄駅でやるには採算が取れない。それでも、歓楽街の喧騒の中の夜と、生活の夜では全く意味合いが異なる。 去年の冬、私はどこにも行けなくなった。そんな事を考えなが…

一夜一夜に人見頃(どら)

今夜は、ネオワイズ彗星というものを観測する絶好のチャンスらしかった。20時前から21時頃までに北西の空に見えるとどこかのニュースで見たから、家の屋上に登って探してみた。この季節は蚊がたくさんいるから、部屋着のワンピースにニーハイを履いて、さら…

解いては結ぶ靴紐(てる)

小学生のときは毎年の楽しみだった祐天寺の夏祭り。日没後の涼しくなった頃、遊んでくるからと、帰宅したばかりの母親に五百円玉を貰って家を飛び出した。道の途中にある叔母の家に寄って年下の従弟たちにも声を掛ける。叔母のところは羽振りがいいから、こ…

女の子は本当にピンクが好きなのか(こうせき)

堀越英美さんの「女の子は本当にピンクが好きなのか」を読みました。わたしは子供の頃、ピンクを好きだったことがなくて、中学三年生のときに私物を嫌いなピンクで埋め尽くす(シャーペンもペンケースも定期入れも、電子辞書までピンク)ことで無理やりピン…

日曜日(こうせき)

山手線、はす向かいに座る男の人の腕にはタトゥーが入っている。タトゥーを入れてる人と友だちになったことがないな。死ぬまでには一回くらいあるだろうか。そんなデンジャラスなことはわたしの人生には起きないかな。 元新体操部の友だち三人と母校のある駅…

sound only(誠)

PCに入っている音楽を聴いてすこし元気になった。大丈夫。明日は9:00からネットワーク機器の設定確認、大丈夫。あと二日で一掃できるような仕事量か?大丈夫? AppleMusicを年間契約したのは、忙しくていちいちTSUTAYAにCD借りに行ってられないのもあるけど…

閃輝暗点(たっきー)

閃輝暗点という言葉をご存知でしょうか。"一瞬だけ灯体の光を輝かせたのちに、素早く暗転して観客の目に残像を焼き付かせる"という照明技法。…ではない。視界に、照明の残像のようなぎらぎらした点が現れる。その点は、暗くなって見えづらくなったり、またぎ…

扇風機はじめました(どら)

この数日間、訳あって数年ぶりに自分の部屋のベッドで寝起きしている。昔、毎日ベッドで寝て起きていた頃はそんなこと絶対思わなかったけれど、ソファで寝ることに慣れてしまった今は、広いベッドはなんとなく落ち着かなくて、寝つきがわるい。私は横向きに…

スケジュール帳真っ白(誠)

最近は通販で洋服を買ったりしてみている。 自粛期間のためお店がやっていないっていうのと、お店がやっている時間に私がいけないっていうので初めてみたけど、なかなか良いかもしれん。 持ってる服と使える予算を確認しつつ、ちゃんと考えて服を買える。 あ…

ヤシャブシの沐浴(こうせき)

海水浴に来てるみたいに、日差しの熱で濡れた髪を温めていた。朝陽を浴びて髪の毛がところどころ赤銅色に光る。ちぎった電線の中身の色。もうずっと染めてないのに赤茶けていて、枯れ落ちたヤシャブシを拾い集めたようなぼわぼわの髪の毛。わたしは自分の髪…

よそ行きの部屋(もっちー)

引き出しの中にはいくつもの箱があって、その中の一つ、マールブランシュ京都北山のお濃茶ラングドシャの化粧箱、白い蓋を開けると、私が今までもらった大事な手紙達が入っている。底には、毎年誕生日に届いていた京橋の消印付きの絵葉書(なぜか八歳の頃の…

対になる電飾(もっちー)

道ができる。歩道ができる。道路ができる。 去年の夏頃、長年空き地だった実家の隣に道路建設工事が始まった。 緑色のフェンスで覆われた100mだか200mくらい伸びた空き地には、子どもの頃にフェンスをよじ登って野球やサッカー、鬼ごっこをしたり、廃材とス…

水溶性の季節(こうせき)

宵の口、辺りはほのぼのと澄んで、街の影は薄墨を重ねたように暗く、七月、ゆるりゆるりと漂う風のなかに、湯気のにおい、石鹸のにおい、人のにおいが仄かに混じっていた。夜半までの時間がひろびろといつまでも伸びていく季節の、水に溶けていくような夕べ…

猿ヶ京(こうせき)

夜のバスに乗って、群馬の山の奥へ奥へと向かっていた。ビロードの座席は汚れとすり切れでざらついている。乗客はすくなく、薄白い車内灯の下、皆が押し黙っている。わたしはその日の昼間、地面に腰を下ろし梅林を見上げていたときのことを思いだした。背が…

いちきさん(こうせき)

今回は羽田から鹿児島へということでございまして、関東のお客様がですね、いっぱいお越しくださいましたということで。いかがでしたかね、機内では快適にお過ごし頂けましたでしょうかね。関東のほうはあんまりお天気がすぐれないとお伺いしたんですけれど…

夏影(こうせき)

消灯された部屋みたいな天気でちっともたのしくならないので、正午過ぎ、庭に出てみたけれど、すぐ室内に戻る。風が吹くとき、奪いとられる体温より、運ばれてくる草のいきれ、人のいきれ、猫や犬や虫のざわつく気配に意識を向けていられるような、暑い夏が…

窓の外は(どら)

雷は嫌いじゃない。ここ数年は毎日朝風呂で、シャワーだけでさっさと済ませて出るのが常だったのが、この1ヶ月くらいは夜に入り湯船にも浸かり、少しのんびりするようになった。湯船に浸かって正面には大きな窓があって、夜の暗いその窓は、まるで外に何もな…

パパイヤの香りがする。(もっちー)

先週あたりの話。 私は猛烈に機嫌が悪かった。少しのことにイライラして、些細な音にも敏感になり、母親の言動の一つ一つが気に障った。幸いこの状態が何なのかが分かっていたので、ああこれはあれだな、と自分で自分を整理することはできる。私の場合、全て…

旅をする窓越しの眼(こうせき)

目薬と目があっている。この、ロート・アルガードは、てつろうくんと東北旅行をしているときに、アパホテルの近くのどらっぐぱぱすで買った。最近、てつろうくんとはビデオ通話をしながら、YouTubeで「世界の車窓から」の動画を、せーので再生ボタンを押して…

New Closeness(こうせき)

ナイロン製の折り畳み椅子に座って生垣に向かって両脚を伸ばすと、向こう脛がしろく、薄っすら発光して見えた。朝日は重みがなくて漂うように世界を照らすから、早朝はなにもかもが特別な色の見え方をする。一秒ごとに陽が降るように重くなる。光に触られて…